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2025年の崖とは?レガシーシステムを刷新しDXを実現する方法

2024.06.13

2025年の崖とは何か?

「2025年の崖」とは、経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」で提唱された概念です。レガシーシステム(老朽化し、複雑化・ブラックボックス化したシステム)が残存した場合、新しいデジタル技術の導入やビジネスモデルの変革の妨げとなり、2025年までにこの問題が解決できなければ、最大で年間12兆円の経済損失が発生する可能性があると警告したものです。

レガシーシステムの何が問題なのか。

レガシーシステムとは、企業が長年にわたって使用してきた古いITシステムのことで、多くの企業に存在し、日常業務を支える重要なインフラとして動いています。しかし、このレガシーシステムを持つ企業の経営者の中には、問題が発生するリスクに気づきながらも、これを刷新できず、ビジネスの革新がしにくい状況に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。レガシーシステムの多くは、日々の業務で使用されているため、すでにいくつかの問題が顕在化しているにもかかわらず、迅速に対応できないという課題があります。このような状況が続くと、業務効率の低下し、競争力をなくすリスクが高まり、経営者にとって大きな悩みとなっています。ここでは、レガシーシステムがもたらす3つの主要な問題について詳しく説明します。

1. システムの老朽化と複雑化

レガシーシステムは長期間にわたって運用されており、その間に多くのカスタマイズや拡張が行われてきました。このため、システムは非常に複雑化し、最新の技術やソフトウェアと互換性がない状態になっています。例えば、COBOLなどの古いプログラミング言語で書かれたシステムは、現代のIT環境ではその言語を理解できる人材が不足し始めており、維持や更新が難しくなっています。このような老朽化したシステムは、データ処理スピードの低下や頻繁なシステム障害のリスクを抱えており、企業の運営に重大な影響を及ぼす可能性があります

2. ブラックボックス化による運用リスク

ブラックボックス化とは、システムの内部構造が不透明で、新しい担当者がその構造を理解するのが難しい状態を指します。これは、特定の技術者に依存している場合に特に問題となります。例えば、その技術者が退職すると、システムの維持やトラブル対応が困難になります。このようなブラックボックス化されたシステムは、トラブルが発生した際の対応が遅れることが多く、企業にとっては大きなリスクとなります。

3. 高コストの保守・運用体制

レガシーシステムの維持と運用には多大なコストがかかります。古い技術に基づいたシステムは現代の標準技術と互換性がないため、専門的な知識と技術を持った人材が必要です。このため、人件費や保守費が高騰します。また、ハードウェアやソフトウェアのサポート終了により、従来以上の保守契約が必要となり、コストがさらに増加することもあります。これらのコストは企業のIT予算を圧迫し、新しいIT投資やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を妨げる要因となります。

このように、レガシーシステムは、今も使い続けている企業にとって日常業務を支える重要なインフラであると同時に、その裏には多くの問題が潜んでいます。システムの老朽化と複雑化、ブラックボックス化による運用リスク、そして高コストの保守・運用体制は、企業が競争力を維持し、成長を続けるための大きな障壁となります。これらの課題を克服するためには、レガシーシステムを適切に刷新し、最新のデジタル技術を導入することが求められます。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の定義と目的

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、企業がデジタル技術を活用して、ビジネスモデルや業務プロセスを根本から変革し、競争力を強化することを指します。DXには、3STEPがあり、DXの最終目的は、単に技術を導入することではなく、企業全体の戦略や文化を変革し、持続可能な成長を実現することです。

デジタル技術を活用することで、業務効率の向上や迅速な意思決定、新たなビジネスモデルの創出、顧客体験の向上など、多くのメリットが得られます。企業は、DXを推進することで、持続可能な成長を実現し、競争力を維持することができるでしょう。

2025年の崖を乗り越えレガシーシステムを刷新しDXを実現する方法

ビジョンの明確化

まず、企業がDXを通じて実現したいビジョンや目標をはっきりさせます。どのような企業になりたいのか、顧客にどんな価値を提供したいのかを具体的に描くことが大切です。このビジョンがDXの方向性を定める指針となります。そのビジョンを明確化するプロセスとしては現場とマネジメントが一体となって取り組むことが不可欠です。情報の透明性を保ち、共有することで、組織全体に一体感が生まれます。これにより、全員が同じ方向を目指して努力する環境が整います。

現状の正確な把握と課題の特定

自社の現在のシステムと業務プロセスを詳しく分析し、課題を明確にします。これには、システムの老朽化した部分や複雑化、ブラックボックス化している部分を洗い出し、問題を見える化することが必要です。現状とビジョンとの間の差を明らかにし、埋めるべき課題を特定します。どの部分に改善が必要か、どの技術や手法を使うべきかを具体的に考えます。

戦略の策定・具体的な施策の検討

課題解決の具体的な戦略を作り、その戦略に基づいた施策を検討していきます。効果と実装に必要な期間、コストを鑑みながら最適な施策を選び、実行計画を立てます。ここでは、実行する施策に優先順位を付け、段階的に実施していくロードマップを作成します。

プロトタイプの作成

選定した施策を具体的な形にするためのプロトタイプを作成します。このプロセスでは短期間でプロトタイプを作り、何度も改善を繰り返すアジャイル開発に近い方法を取るとよいでしょう。プロトタイピングを行うことで、実際のユーザーの意見を取り入れることもでき、ニーズや期待に応じた対応ができるようになります。抽象的なアイディアよりも具体的なプロトタイプを用いることで、誤解を防ぎ、共通の理解を深めることができます。

現場での検証と改善

プロトタイプが実際の業務に適しているかを現場で検証します。このプロセスでは、現場のフィードバックを基に、必要に応じて改善を重ねていきます。DXの効果を最大化するためには、PDCAサイクル(計画、実行、評価、改善)を回すことが重要です。プロトタイプを現場で運用し、その成果や問題点について詳細なフィードバックを集めることで、実際の業務環境でどのような課題があるかを明確に把握することができます。集めたフィードバックを基に、プロトタイプの改善と調整を行います。必要に応じて、再度施策の検討しなおすこともあるでしょう。小さな改善を積み重ねることで、プロトタイプは徐々に現場に適した形に進化していきます。

現場定着

プロトタイプの改善が完了し、最適なソリューションが確立された後、次に重要なのは現場定着です。新しいシステムやプロセスを現場に定着させるためには、従業員へのトレーニングや継続的なサポートが必要です。また、現場の従業員が新しいシステムやプロセスに適応できるようにするための支援も重要です。新しい取り組みが組織全体にしっかりと根付き、持続的な改善が可能となるような組織作り、人材育成を続けましょう。

DX推進における人材育成の重要性

DX(デジタルトランスフォーメーション)を成功させ、2025年の崖問題を克服するためには、社内でのDX人材の育成が不可欠です。レガシーシステムを最新のデジタル技術に置き換えるには、新しい技術の理解と運用が必要であり、これを担う人材の育成が急務です。

レガシーシステムを最新のデジタル技術に置き換えるためには、AI、ビッグデータ、クラウドコンピューティング、IoTなどの新技術を理解し、運用できる人材が不可欠です。また、レガシーシステムの刷新には、業務プロセスの再設計が伴います。社内で、自社の業務プロセスを分析し、効率化や自動化のための新しいプロセスを設計し、変革を推進するリーダーシップが必要となります。

デジタル技術は日々進化しているため、常に最新の技術を取り入れ、ビジネスプロセスを最適化することが重要です。企業が常に競争力を維持し、成長を続けるために、今から計画的にDXと人材育成に取り組むことが求められています。

まとめ

2025年の崖問題を克服し、DX(デジタルトランスフォーメーション)を成功させるには、レガシーシステムからの脱却と社内でのDX人材の育成が不可欠です。企業がDXを成功させるためには、最新のデジタル技術を理解し、運用する知識、業務プロセスの再設計、そして変革を推進するリーダーシップが求められます。

しかし、社内でのDX人材の育成が進んでいれば問題ありませんが、リソースが不足していたり、専門的な知識が足りなかったりする場合もあります。そのような時は、DX推進を支援する最適なパートナーを探すことが有効です。外部の専門家と連携することで、効果的にDXを推進し、レガシーシステムの課題を克服することが可能です。

DXの成功は、技術と人材の両面からのアプローチが必要です。企業が未来に向けて成功するためには、今から計画的にDXと人材育成に取り組み、その一歩を踏み出すことが求められています。